「書評書いてみました」本が売れないというけれど

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ワダマコ書店さんにて
書評を書かさせていただきました。

「リンク=本が売れないというけれど」

本文をここにも。

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「本が売れない」「若者が本を読まない」というキーワードが話題になっていたのは、ちょうどこの書籍が出版された2014年ではなかっただろうか。

2015年になり、取り上げられることが減ってきたこの頃、
ふと本棚に手を伸ばして掴んだのが本書『本が売れないというけれど』である。

忘れかけられているトピックだからこそ、今一度考える機会を得たことは幸運なことであった。
面白い本を紹介するというこの書評と、本を売るということには少なからず関係があるものだ。

「◯◯が売れない」
というシンプルな言葉は、本だけには限らず、どの商品においても言われていることである。
これは不況が原因であると、よく言われたものだ。
しかし、本当にそれだけなのだろうか。

お金を出すのは人間であるのだから、唯一解があるとは限らない。むしろ、不況だから本が売れないという決めつけは危険かもしれない。

出版界のことを振り返ってみると、本が売れないと言われてから登場してきた「BOOK OFF」という中古本の買取販売の形態がある。
定価の半値で本を買うことができるというのは、読書人にとって広い裾野を敷いたはずだ。

中古本の普及により、一気に拡大した本市場は5年足らずで約1万冊の新刊が発行されることとなる。というのも、ブックオフが登場する以前の1980年代では10年掛けて、約一万冊の新刊が発行されているのだ。単純に10倍のタイトル数が世に出回ったことになる。

出版点数の激増にはITテクノロジーの発展も大きく影響しているように思える。

現在では、一人一台は確実に所持しているパソコンやスマートフォン。インターネットへのストレスフリーな接続によって、ブログやSNSなどでいろんなものを表現できるようになった。さらに、自分で電子書籍を出版することもできる。
出版社に頼らずとも、個人で出版できる。日本国民一億人が潜在的な著者として考えてもいいかもしれない。出版への敷居が下がったのであるから、「出版数」が増えるのは必然だと考えることもできる。

ある意味では、著者と読者にとって自由な市場になったのではないだろうか。
例えば「本を売る」「読む」という二点に着目してみる。

読書記録をユーザー間で共有できる「読書メーター」では、それこそ無数の人が十人十色、本を読んでいるのがわかる。他人がどんな本を読んでいるのか、ということはこれまで知ることのできなかった情報である。


利用者としての読メは「本の内容」と「読後の感想」の二点を私は重要視している。なぜなら、自分が本を買う鍵を握っているがその情報だからだ。

大規模書店に行くと、有り余る本をくまなく見ていくのは時間がかかる。
本を眺めつつ、ビビッとくる作品と出会うのを待つという探し方は、時間と気持ちに余裕がないとできないのである。
読書メーターなどのネット情報が果たす役割は、ある程度の精度でもって「目的」に沿える本と出会えることが容易になることだと思う。
インターネットの情報拡散により、本との出会い方に変化が生まれているのである。

では本を売る側としては、どんな方法がこれから必要になってくるのだろうか。

今までのように、出版社から配布されるリスト以外をもとにした並べ方ではこれまでと同じだ。
情報社会では、「誰が」この本を読んでいるのか、ということにも注意を向けたほうがいいだろう。
例を挙げると、ブックキュレーションサイト『HONZ』は既にものすごい影響力を持ち始めている。
その余波は本屋にも及んでおり、HONZメルマガによる書評記事の一覧が配信されると、翌日には面出しされていたりする。

今後、本を売っていくには一読した人の情報も掴んでおかなければいけないのではないか。いくら書店員といっても、本の内容の全てを把握することは不可能だ。

本を売るために、
本を手にとってもらえるように、
本の内容を読んでいる読者の情報を一つでも取り入れることができれば、
もっと面白い本屋、キュレーターとして優れた書店員が登場してくると私は考えている。
読書メーターユーザーなどの不特定多数の本好きたちと繋がっていることも、売り方への化学変化を引き起こしそうな気がしてならない。

私が書評を気ままに書かせてもらっている
「ワダマコ書店」
一読した本の内容について書き
「本のテーマ」
について考えてみる。

手前味噌だが、本記事なんかもそうした一助になるとそれ以上に喜ばしいことはない。

『本が売れないというけれど』、売れるポテンシャルを秘めているものであることに違いはない。
多くの本がひと手に渡るための鍵は、キュレーションと発信にあると、私は思う。

出版社にも本屋にも読者にもできることはまだまだあるのだ。

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